見付けた、と思った。
それは深い海を泳ぐための酸素だった。ずっと、ずっと冷たく暗い海を泳ぎ続けて、ようやく見付けたそれに手を伸ばす。
最初はただ剣の扱いが上手いだけの人。優秀な人材ではあるけれど、ただそれだけ。いつからそれが、この焦がれるような感情になったのだろう。
この人なら、私を理解してくれると。隣を歩んでくれると。そんな光に吸い寄せられる羽虫のような期待を抱き始めたのは、一体いつからだっただろう。
どうしても、私にはその人が必要だった。きっと誰よりも希求していた。
なのに何故、あなたはあの男の隣に居るの。どうして、私の前に立ち塞がるの。どうして、私の隣に居てくれないの。どうして、この道は交わらなかったの。
あなたを前にすると、決意が鈍りそうになる。胸の奥を灼く、痺れるような憧れを思い出す。私が私の形を保てなくなる。
暗い海の底を一人で泳ぐ。大丈夫、私はまだ泳げる。
ただ、息が苦しいだけだ。