ジュン君と私

オリジナル

他人に生活を握られることを楽しんでるタイプのヒモもいるのかもしれないなぁというお話
ジュン君が「私」と会うのは多分平凡な人が見たいからなんだと思っている


 ジュン君とは不思議な関係だ。友達と言うには距離があるが、何とはなしにたまに会う。今もカフェでお茶をしているが、代金はそれぞれが持っている。‬
‪「今は何してるの」‬
‪「お姉さんに飼われてる」‬
‪ この通り、ジュン君は私にはよく分からない人だ。‬
‪「そういう生き方怖くない?」‬
‪ ジュン君はとても綺麗な顔をしているから、そういうお姉さんに気に入られるのも納得だ。解雇されたとしても次の就職先はすぐに見つかるのだろう。‬
‪ ジュン君はたっぷりのオレンジが漬け込まれたアイスティーを、形の良い唇に挟んだストローで吸い上げる。‬
‪「他人に自分の命を握られてるのってゾクゾクしない?」‬
 ‪その顔に微笑を浮かべて、最近ミルクティーにハマってるんだとマイブームを話すかのような気軽さで、ジュン君はそう言ったのだった。‬
‪ こうしてお茶をしている間柄ではあるが、私はジュン君のことが何一つ分からない。むしろ理解できない事柄が増えているようにさえ思う。‬
‪ 答えに窮した私はそうなの? などという何の面白味もないことしか言えず、多少の気まずさを覚えながらカフェラテを啜るのだった。‬
‪「じゃあ、また」‬
‪ 私のような人間といて何が楽しいのか分からないけれど、ジュン君はいつも去り際に『また』をくれる。‬
‪ 事実、その『また』が繋がってこうして今日も会っているのだが、正直に言うとこれが一番理解できない。‬
‪ ジュン君と過ごす時間は特別楽しい訳ではないが、理由を付けて行きたくないほど嫌いでもない。ジュン君が特別親しくもない私と会おうとするのかは謎である。‬
‪ 不思議な人だ、と毎回思う。‬
‪ ただ、誘われればまた私はこうして会いにいくのだろうから、名前のないこの関係性を何だかんだと楽しんでいるのだろう。‬