デュナミスの花園

メルクストーリア

 いろいろなお菓子。好きな本。はしたなくあちこちに広げて、大きなベッドに二人寝そべりながら何でもないことを話しては笑って。きらきら、きらきら。楽しい時間。ふわふわ、ふわふわ。砂糖菓子のような時間。二人だけのパジャマパーティー。女の子だけの秘密の園。私の寝巻きを借りたあなたは、少し照れ臭そうに落ち着かないと言っていたけれど、今はすっかりと寛いだ様子で冷たいアイスを齧っている。同じソープの匂いをさせながら、ぬくもりが残る体を寄せ合って。明かりを落とすまでずっと、笑いあっていた。
 薄闇に包まれて、ひんやりとした夜の空気が頬を撫でると、無性に私は寂しくなる。目を開けて、そこにあなたがいるかを確かめる。目の前にあるあどけない寝顔を見ていると、安堵すると同時に不安になった。私はいつまで、女の子でいられるのだろう? あなたといつまでこうしていられるのだろう。下ろされた瞼から伸びる濃い睫、ふっくらとした滑らかな頬、赤く瑞々しい唇。私達は日々生まれ変わっていて、この体の形はどんどんと違うものになっていく。私はいつまで、女の子でいられるのだろう。この花園に立ち入ることができるのだろう。
 大人になんてなんてなりたくない。ずっと女の子でいたい。こうして二人で顔を寄せ合い笑っていたい。瓶から零れた金平糖が、闇の中を星のように落ちて。この願いを叶えてくれはしないだろうかと、ささやかな期待を抱きながら私はミルク色の眠りの中へと溶けていく。次に目が覚めた時、そこには生まれ変わった私達が立っている。一枚一枚脱皮を繰り返すように、女の子を脱ぎ捨てて。薄い皮の下はまだ溶けたチョコレートのようにどろどろだけれど、いつかそれが固まって、最後の女の子を脱ぎ捨てた時、私達は一体どんな生き物になるのだろう。
 甘いお菓子と華やかなソープに微かな花の香を感じながら、私はまた一つ、女の子を脱ぎ捨てた。