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ぐじゅり、ぐずりと音がする。
「あっ……あぁ…おく、きもちいい……!」
甘くどろどろに溶けた声が聞こえる。
互いの下肢をぐちゃぐちゃに濡らしながら、何度も、何度も交わっている。
腿の上に腰かけた彼女が、髪を振り乱しながら一心不乱に腰を振っていた。混じり合う粘液が泡立って、中では無数の襞がにゅるりと絡み付いてもっともっとと続きを強請る。たわわに実った乳房が目の前に突き出され、硬く膨らんだ乳嘴を軽く噛むと、華奢な体は魚のようにびくびくと震えた。
「少し痛いのがお好きなのですか? 中が締まりましたよ」
ふるふると首を振る彼女に、もう一度歯を立てて、舌で舐る。甲高い嬌声が上がって、頭が強く掻き抱かれた。柔らかな胸に顔が埋められ、頭上では乱れた呼吸の音が続いている。交わり始めた頃に比べて、彼女の乳房は少し大きくなったように思う。それは彼女の体が雌のものへと変わっているのか、それとも日課として続けていた鍛錬を止めてしまったからなのか。彼女の体の稜線はよりはっきりと、肉感的なものへと変わっていると感じるのだ。
変化はそれだけではない。彼女の肋をなぞるように撫でると、面白いように痙攣する体。度重なる交合によるものか、彼女の体のあちこちが鋭敏に性感を拾い上げるようになっていた。ぐっと締まる膣をこじ開けるように腰を動かすと、悲鳴染みた声が上がる。
「んっ、あ……だめえ、だめえ!」
言いながら、彼女の腰は貪欲に快楽を求めて動き出す。互いの肉体をぶつけ合って、どこか遠い場所へと飛んでいく。自身を締め付ける力は食い千切らんばかりに強くなり、にわかに視界が霞み始める。
「あ、もう、だめ、ベディ! ベディ!」
叫ぶ声を聞きながら、高みへと上り詰める。肉体を手放したかのように意識がぼんやりと宙を漂っていた。
そう、これはここではないどこかへと『逃避する』行為であった。
くたりと弛緩する彼女の体を抱き留めて、胎内に埋め込んでいたものを引き抜くと、腿をどろりと白いものが伝う。その下肢は様々な体液が混ざり合って泥濘のようであった。抱き上げた細い体は意識がなくとも軽かった。そんな彼女を連れて浴室に行き、汚れた体を清めていく。白い素肌は処女雪のように無垢であるのに、その中は爛熟した果実のように甘く蕩けている。ぱっくりと口を開けた秘裂に指を差し入れ、放ったものを掻き出していると、彼女の脚が微かに震える。意識を取り戻した彼女と、もう一度この場で交わることもまたあった。
洗い清めた体に軽く衣服を着せ付けて寝台に横たえると、我知らず小さく息が漏れた。この場所には、必要最低限の生活設備は揃っていた。シェルターなのか基地なのかは分からない。それを知る人間が存在しないからだ。原動力は燃料や電力ではなく、全て魔力で賄われており、水は雨水をベースとして完全濾過され循環している。魔力さえあれば生きていけた。それはまるで、彼女と二人ここで生きていけと言わんばかりであった。
彼女とここで暮らし始めて、どれ程の月日が経っただろうか。既に時間の感覚は曖昧になっていた。眠る彼女を残して外に出ると、剣を携え歩き出す。外の世界には、何もない。まっさらで真っ白な大地が続いているだけだ。そこには今まで見たことがない類の生物が沸いており、何の生き物なのか分からないそれをひたすらに殺し続ける。彼女との生活拠点を守るためでも、食料を調達するためでもあったが、何よりもこうして自分に役目を与えていないと気が触れそうだった。殺しても、殺しても、次の日にはそれはまた際限なく沸いてくる。日が暮れるまで殺して、殺して、暗くなった頃にようやく彼女が待つあの場所へ帰る。
「おかえり、ベディヴィエール」
彼女はそう言ってこの身を抱き締め、貪るように口を吸う。赤い舌が蠢いて、柔らかな乳房が押し付けられて。その下肢がしっとりと潤っていることを、私はよく知っていた。指先で秘裂に触れると、既にそこは腿まで伝うほどに蜜を滴らせている。花芽を転がせば、彼女はがくがくと体を震わせながら甘い声を上げて縋り付いてきた。見上げてくる琥珀色の瞳は、恍惚に蕩け切っている。
「ベディ……欲しいの……」
彼女は、快活な明るい笑みを見せなくなっていた。その代わりに、快楽に溶けた目で蠱惑的に笑うようになった。彼女の剥き出しの欲望が、こうも扇情的なのだと知ったのはいつのことだろう。差し出される舌に応えながら、彼女を貪った。それしかもう、生きる術を知らなかったからだ。
カルデアが謎の組織に襲われたのは、もうすぐ年が明けようかといった時であった。役目を終えた全てのサーヴァント達が退去していく中、何故かこの身だけは引き止められたのだ。曰く、一番マスターのことをよく分かっているサーヴァントであるから、ということらしい。そうしてカルデアは襲撃を受け、壊滅寸前のカルデアから、最後の希望であるマスターと、それを守護するサーヴァント一名が強制転移させられたのだ。定員は二名。円卓を持つ少女は、自分はまともに戦えぬからと、主を預けてその場に残った。きっと、彼女こそ主を一番守りたかったのであろう。
そうして転移は無事成功した。座標の指定はできず、どことも知らぬ土地に出たが、それは些末な問題であった。何故なら世界は既に表層を失い、一面の虚無と化していたからである。それでも、あらゆる局面を乗り越え、人理修復を成し遂げたマスターであるなら、この状況すらも打破できるときっと誰もが思うだろう。そこでようやく人類は選択を誤ったことに気が付いたのだ。
彼女は、まだ二十にも満たぬちっぽけな少女なのだ。彼女一人にできることなど、何もなかった。今までは、誰かが道を指し示して導いてくれていた。その標を無くした少女は、どこに向かえばいいのかが分からない。進むべき道筋が分からない。それを教えてくれていた大人たちはもう、いないからだ。そのことに気付いた時、小さな少女の脆い両肩はいとも容易く潰れてしまった。世界という重みに耐えきることが出来ずに。
「ベディ……どうしよう……もうみんないないの……私、私……」
呆然とした表情で伸ばされるその小さな手を、縋り付くように寄せられたその唇を、拒むことがどうしてできようか。
「あんっ! あっ、ああっ……!」
柔らかな肉体を穿っている。あの日縋ってきた弱々しい声音は、今は言葉にならない法悦の喘ぎを漏らし続けていた。四つん這いになったその腰を掴み、獣のように腰を振っては彼女の体を何度も貫く。子宮口に当たる度に万力のように締め上げられ、ぬめった内壁が精を搾り取るように蠕動する。
「っ、そんなに……食い締めないでください……!」
「ひいぃ……! いい、いいのぉ! もっと…もっと……!」
玉の汗が飛ぶ。全身汗みずくになりながら行うまぐわいは、まるで彼女と一個の生命になれたような気がした。蜜口からは絶え間なく粘液が溢れ、ぐちゃぐちゃぬぽぬぽと音を立てながら幾つもの雫が飛び散り、滴り落ちている。
彼女の胎にはもう何度精を注ぎ込んだか覚えていない。普通ならば、とっくに彼女は子を孕んでいるだろう。だが、この身は肉体を模した魔力の塊に過ぎず、彼女の胎に新たな生命を宿らせるような力はない。それでよかったと心底思う。こんな地獄に子が産まれては、あまりにも不憫だ。
「あっ、あああっ! いっぱい、あたって……! ああ、いく、わたし、もう……!」
彼女が力尽きるまで交尾を続けて、陽が沈むまで殺して、帰ったらまた彼女を抱いて、殺して、よく分からない肉を食べて生き永らえて、また交わって、殺して、まぐわって、殺して、そうしてまた彼女と交合をして。
閉じられた世界で、たった二人貪り合いながら生きている。体を繋げている。きっとそれは、そこに他者がいるのだと確認する行為でもあるのだろう。眠りに落ちた彼女の隣で、よく分からない生き物の肉を解体して食べられる形にして、そうして目覚めた彼女と共に、美味しくもない肉を食べて生命を繋ぐ。それからまた肌を重ねて、日が暮れるまで殺す。
時折、この剣を見ると、別の物を斬ってしまいたくなる。そうすれば、終焉が訪れるのでは、楽になれるのではと思うのだ。だが、その度に思い出すのだ。縋り付いて来た小さな手を。その儚さを。それだけで、愚かにも弱い心は今日も正しく対象を斬り殺す。そうして命を繋ぎ、悪夢のような日々を繋ぐのだ。一体いつまでこんなことを続けるのだろうかと、あの閉ざされた理想郷に帰る度に思う。それでも、それでもこの身はあの場所へと帰るのだ。
「おかえり、ベディヴィエール」
そこには名もなき怪物が待っている。